ふと自分の体を触ったときに、末端の手足が冷たい、おしりが冷たい、腰や二の腕が冷たいなど、局所的に冷たいところってありませんか?女性は特に、心当たりがあると思います。これは体が冷えているサインです。
冷え性の改善には、生姜など体を温める効果のある食材を取り入れる、ハラマキをしたり、手首足首を冷やさないようにするなどの対策が有名ですが、ヨガは冷え性の改善に有効だと思いますか?
答えは”YES”です。ヨガは冷え性の改善に、とてもオススメな方法のひとつです。
この記事ではヨガでなぜ冷え性が改善できるのかを解説してから、オススメのヨガポーズを写真と動画で紹介します。
この記事の目次
“冷え”の原因とは?
まずは体が冷えるメカニズムについて、簡単に知っていきましょう。
自律神経の乱れ
そもそも人間は、どうやって体温を維持していると思いますか?人間は暑いときは汗をかいて熱を放出し、寒い時は体を震わせて熱を生み出そうとします。これらの機能を司っているのは“自律神経”です。
自律神経が正常に働かないと体温調整がうまくいかなくて、そんなに暑くないのに大量に発汗したり、体温を保つことができなくなり体が冷えきったり、ということが起こります。
運動不足
体の中でもっとも熱を生み出す器官は筋肉です。なので、運動不足によって筋肉量が低下すると、体はどんどん冷えていきます。女性に比べて男性に冷え性の人が少ないのは、総じて男性のほうが筋肉量が多いから。
現代社会では慢性的な運動不足がしばしば指摘されています。私たちの活動量は低下していく一方なので、意識的に日常に運動を取り入れて筋肉量を落とさないようにすることが大切です。
血行不良
血行不良とは、血管内の血流量が低下した状態です。血行不良は、血液がドロドロになることによって起こります。
血液がサラサラであれば勢いよく血管を流れるので、末端の細い血管にも血液が届きますが、ドロドロの血液は流れが悪く勢いがないので末端の細い血管にまで血液が届かず、手先や足先の細い血管は血が流れてこないのでその機能を失い死んでいきます。これを“ゴースト血管”といい、末端冷え症の原因のひとつになっています。
“冷え”を改善するには?
冷えの原因が理解できたら、それらを取り除くために何をすればよいかを見ていきましょう。
呼吸を使って自律神経を整える
先に紹介したように、体温調節を担っているのは自律神経です。
自律神経に関する記事でも詳しく紹介していますが、いつも忙しい人は深くゆったりとした呼吸で副交感神経を優位にし、リラックスする時間を取ることはが非常に大切です。逆に、メリハリの少ない生活でダラダラしてしまいがちな人は、パワフルな呼吸で交感神経を優位にし、心身を活性化する時間を取ることが大切なのです。
生きていく上で心身を使うことは避けて通れません。疲れたら癒す、無気力な時は少しパワフルにするなど、常に自分のバランスを取って心身ともに健康な状態を維持しましょう。バランスを整えておけば、自分でコントロールできない自律神経なども自然と整っていくのです。
筋肉を強化する
肘を曲げて力こぶを出すような、筋肉を収縮させる(力を発揮する)動きをするとき、筋肉の中ではいろいろなことが起きています。
筋肉の中にある“ミトコンドリア”が酸素と結合することによってエネルギーが生み出されます。このエネルギーとは、筋肉が力を発揮したり、そのパワーを維持するときに利用されるのです。そしてこのエネルギーが生み出されるときに、同時に筋肉は熱を生み出すします。
運動をしても全然汗をかかないという人は、筋肉量が低下していることがとても多いです。それは自分でエネルギーを作る能力が低下しているということ。筋肉を強化するとミトコンドリアの数は増え、エネルギー産出能力(=熱の産出能力)がアップします。
ストレッチで血行を良くする
ストレッチをするとき筋線維は伸ばされ、詰まった組織の間に隙間ができます。この隙間を増やしていくことで、滞った体に流れが起こり始めるのです。筋肉を柔らかくしなやかに保つことは、血行と密接に関わっています。
体の中のめぐりが良くなると、先ほど紹介したゴースト血管が徐々になくなっていき、再びそこに血液が通うようになります。また、リンパ(老廃物の通り道)の流れも良くなり、溜まった老廃物がきちんと処理されはじめるのです。
また、関節には“関節包(かんせつほう)”という、関節をスムーズに動かすための潤滑液を保有する膜があります。筋肉を伸ばしたり、強化するために関節を動かすことによって、この潤滑液が染み出し、硬くなった関節と筋肉にうるおいを与えてくれます。この作用によっても、血行が改善されるのです。
重力を使って体に流れをつくる
私たちは普段、主に立つか座る姿勢で生活しています。この姿勢では、心臓から下に血液を届けるのは重力があるので簡単ですが、心臓から上に血液を届けるのは、下に向かわせるよりはパワーが必要ですよね。
また逆に、心臓から下に溜まった老廃物を心臓の方に戻すのは至難の業。重力に逆らって上向きに流れを作らなければなりません。なので下半身はむくみやすいのです。
そこで、普段の生活と上下を入れ替えて体内に流れを作るのは、血行改善や老廃物を流すのに有効な方法です。たとえば心臓よりも頭が下に来るように、立って前屈をしたり、仰向けに寝て足を持ち上げる、両手をあげてバンザイにするなど。このような動きは末端に血液を流したり、末端の老廃物を回収するのにとてもオススメです。
冷えを改善するオススメヨガポーズ
冷え改善のポイントを把握したら、それらを活かしてオススメポーズの練習をしてみましょう。
下半身の筋肉を強化する“ハイランジ”
【やり方】
- マットの前方でまっすぐに立ちます。
- 左足を大きく後ろに引き、両膝を伸ばして骨盤を正面に向けます。このとき、左足のかかとは床から浮いていて、つま先は正面向きです。
- 右膝を曲げて、膝の真下にかかとが来るように調整します。
- 両手を上げて、目線は手と手の間を見ます。
- 5~10呼吸キープします。
- 左足を前に揃えたら、右足を後ろに引き、反対側も同様に行ないます。
大きな前ももの筋肉をストレッチする“スプタ・ヴィラーサナ”
【やり方】
- 両足を伸ばし、脚を閉じて座ります。
- 右膝を曲げて、かかとをおしりの横にセットします。このときつま先は真後ろに向け、太ももを平行に保ちます。
- 両手をおしりの後ろにつき、指先をおしり側に向けます。
- 坐骨を膝裏に向かって伸ばしてから、肘を床について前ももを伸ばします。このとき膝が浮いたり、外に開かないように注意します。
- 余裕があれば上半身を床に降ろし、仰向けになります。腰が浮きすぎないよう、腰骨を胸に引き寄せます。
- 5~10呼吸キープします。
- 肘で床を押して上半身を持ち上げ、右足を前に伸ばしポーズから出ます。
- 左膝を曲げて、反対側も同様に行ないます。
関節を圧迫したあと一気に解放し、血行を改善する“ガルダーサナ”
【やり方】
- 両足を閉じてまっすぐに立ちます。
- 右肘を顔の前に出し、下から左腕を絡めて手の甲を合わせるか、無理がなければ手の平を合わせます。
- 軽く膝を曲げ、左脚を右の太ももに絡めます。余裕があれば左のつま先を、右のふくらはぎに引っかけます。
- 骨盤を正面に向け、息を吐きながら鼠径部を後ろに引きおしりを床に近づけます。
- 5~10呼吸キープします。このとき肘同士、膝同士を真ん中に寄せ合うようにして、体の中心軸にすべてを寄せていきましょう。
- 手と足を解いてまっすぐに立ち、脚の付け根や肩の付け根に血液が流れるのを感じます。
- 反対側も同様に行ないます。
心臓から上の血流をアップする“ウッターナーサナ”
【やり方】
- 両足の間に拳が1個入る幅を開いてまっすぐに立ちます。
- 軽く膝を曲げ、息を吐きながら前屈します。このとき、つま先と膝のさらを正面に向けておきましょう。
- おなかと太ももをピッタリとくっつけ、背骨をリラックスさせぶら下げます。
- 両手は自然に床に置きます。
- おなかと太ももが離れない範囲で少しずつ膝を伸ばし、太ももの裏側を伸ばします。
- 5~10呼吸キープします。
- 息を吐きながら、背骨をひとつずつ積み上げて起き上がります。
下半身の老廃物を流す“ヴィパリータ・カラニ”
【やり方】
- 仰向けになり、膝を立てます。
- 膝を胸に引き寄せ、おしりを持ち上げてつま先を頭の向こう側の床につきます。
- 両手を背中側でつなぎ、肩甲骨を寄せて胸を開きます。
- 両手を背中に添え、指先は天井に向けましょう。
- 両手で背中を支えながら、脚を片方ずつ天井に向かって持ち上げます。このとき、頭、肩、肋骨裏側の上部は床についています。
- 両足で天井を蹴りながら、目線は足先を見て10~20呼吸キープします。
- 両手で背中を支えたまま、股関節を曲げ、つま先を頭の向こう側の床にそっと下ろします。
- 両手を解放し、上の背骨からひとつずつ床に下ろします。
- 仰向けに戻ったら両足を伸ばし、首を左右に軽く揺らしてから、数呼吸リラックスします。
ヨガは冷え性の改善に効果的!
ここまで解説してきたように、ヨガは“冷えない体を作る”のにとてもオススメな方法のひとつです。自律神経を整え、筋肉を強化し、血行改善をすることで冷えに抵抗する力をつけることができます。
また、それと同時に体を冷やす行動を減らしていくとよりベターです。たとえば冷たいものを飲み過ぎない、空調の効いた室内では1枚羽織る、3つの首(首、手首、足首)を冷やさないなども合わせて実践してみましょう。
“万病のもと”といわれる冷えをヨガで改善し、冷えに強くめぐりのよい健康な心身を維持していきましょう!