ヨーガ・スートラの『八支則』とは?8ステップをわかりやすく解説!

多くの人が身体の健康のためにヨガを始めますが、続けていくうちに「ヨガはただの体操ではない」と気づくと思います。でも「ヨガって何なの?」って聞かれると、的確に説明するのは容易ではありません。

受講するクラスや先生によっても雰囲気が違い「こんなヨガもあるのか」と感じた体験は、ヨガを続けている多くの人にあるでしょう。そんな多様性に富んだすべてが「ヨガ」という言葉で括られるため、「ヨガって何なの?」と聞かれても、シンプルに説明するのが難しいのです。

この記事では、広く深く多様性に富んだ「ヨガ」について、ヨーガ・スートラに書かれている八支則(はっしそく)の面から、できるだけわかりやすく解説してみたいと思います。

ヨーガ・スートラとは

ヨーガ・スートラは、パタンジャリが編纂した4節195経から成るラージャヨガ(瞑想のヨガ)の聖典です。ラージャヨガとは、心を鎮めてものごとをありのままに見ることで真理に到達する道のこと。

スートラでは「ヨガとは心のはたらきを止滅させることである」と定義されていて、心を鎮めるための8つのステップのことをアシュタンガ・ヨガ/八支則(はっしそく)のヨガといいます。

ヨガに関する聖典はサンスクリット語というインドの古語が使われていて、聞き慣れない言葉がたくさん出てきます。この記事ではできるだけ簡単な言葉に置き換えて補足しますが、ヨガのことを学ぶならサンスクリット語にも少しずつ慣れていきましょう。

八支則(はっしそく)

心を鎮め、本来の自分を探求する8つのステップ(八支則)は以下の通りです。

      1. ヤマ/禁戒
      2. ニヤマ/勧戒
      3. アーサナ/坐法
      4. プラーナーヤーマ/調気法
      5. プラティアーハーラ/制感
      6. ダーラナー/集中
      7. ディヤーナ/瞑想
      8. サマーディ/三昧

八支則の1~5までは外的部門(自分の外側に関すること)、6~8を内的部門(自分の内側に関すること)といいます。さっそくひとつずつ見ていきましょう。

ヤマ/禁戒

八支則の1つめは、ヤマ。禁戒(きんかい)と訳され、簡単に言うとしない方がいいことで、他者と気持ちの良い関係を築くための教えが中心です。

ヨーガ・スートラには心を鎮めて本当の自分を探求する道が説かれていますが、心配や不安をたくさん抱えていては心は絶えず揺れ動き、静かに自己探求するどころではなくなってしまいます。

ですから、まずは以下の5つのヤマを実践し、心を揺らす要因をなるべく取り除いて自己探求に向かう準備をします。

        1. アヒンサー(非暴力)
          生物に害を加えない。暴力を振るうことだけでなく、心の中にも怒り、憎しみ、暴力的なものを抱かない。
        2. サティヤ(正直)
          嘘をつかない。真実のみを話すこと
        3. アステーヤ(盗まない)
          他人の物、時間、平和、権利、尊厳などを奪わない。欲しがったり羨ましがったりもしない。
        4. ブラフマチャリヤ(禁欲)
          欲望を満たすことに夢中になってエネルギーを浪費しない。かけるべきところにエネルギーを集中させる。
        5. アパリグラハ(貪らない)
          所有の放棄。必要以上のものを所有しないこと。

ニヤマ(勧戒)

八支則の2つめは、ニヤマ。勧戒(かんかい)と訳され、簡単に言うとしたほうが良いことで、自分の在り方、自己研鑽に関する教えが中心です。

本当の自分を探求する道のりは長く、時には挫けそうになったり、こんなことをして何になるのだろう、もういいやと投げやりな気持ちになることもあります。そのような障害を乗り越え探求を続けるには、自己研鑽が欠かせません。

ヤマ同様、ニヤマも5つあります。これらは他人から言われてやるのではなく、自分で決めてやることがとても重要だと言われています。

        1. シャウチャ(清浄)
          身体と心を清潔に保つこと。心に不浄な思いを持たず、使う言葉もきれいなものを心掛ける。
        2. サントーシャ(足るを知る)
          今あるもの、与えられたものの中で満足すること。
        3. タパス(苦行)
          熱意をもって行う自己研鑽。汚れを浄化するような、熱を帯びた行ない。
        4. スヴァディヤーヤ(聖典の研究)
          ヨガの聖典を自己学習すること。
        5. イーシュヴァラ・プラニダーナ(自在神祈念)
          万物の背後にある力、自然の摂理など、説明できない大きな力(神)へ敬意を表すこと。

アーサナ(坐法)

八支則の3つめはアーサナ、坐法(ざほう)です。ヨガのポーズのこともサンスクリット語でアーサナといいますが、八支則のアーサナは瞑想するための坐法のことを指しています。

ヨーガ・スートラの中でアーサナについて言及されているものは非常に少ないのですが「坐り方は、安定した、快適なものでなければならない。」とあります。つまり心を鎮めて自己探求するために、安定して快適に坐りましょうということです。もし姿勢が悪かったり、身体に硬さがあると、瞑想のために坐ってもすぐに腰が痛い、股関節がつらいなどと感じて、自分と向き合うどころではなくなってしまいます。安定して快適に坐れる身体作りのために、ヨガのポーズを練習します。

スートラにはどんな坐法で坐るのかなど、具体的なやり方に関する記述はありません。瞑想のために安定して快適に坐ることは、わざわざ解説などする必要のないほど当たり前のものだったのかもしれません。

プラーナーヤーマ(調気法)

八支則の4つめは、プラーナーヤーマです。調気法(じょうきほう)と訳され、プラーナのコントロールを指します。プラーナとは生命を維持するためのエネルギーで、私たちは呼吸を通してプラーナを取り入れています。

リラックスしているときは深くゆったりした呼吸、不安や緊張があるときは浅く早い呼吸になることからもわかる通り、呼吸は心と身体の状態を如実に表します。プラーナをコントロールし、呼吸を細く長くゆっくりとすることで、身体と心を鎮めて自己探求に向かう準備をするのがプラーナーヤーマです。

プラティアーハーラ(制感)

八支則の5つめはプラティアーハーラで、外的部門の最後です。制感(せいかん)と訳されますが、制感という日本語自体あまり馴染みがなく、わかりにくいですよね。簡単に言うと、五感を制御することを指します。

五感が制御されていない状態とは、たとえば目に入った楽しそうなものにせわしなく興味が移ることや、漂ってくる美味しそうな匂いに吸い寄せられて食べ過ぎることなどが挙げられます。反対に、五感が制御されている状態とは、楽しそうなものが目に入っても集中を保てたり、漂ってくる美味しそうな匂いを嗅いでも平常心でいられることです。

つまりプラティアーハーラとは、自分が五感の奴隷になるのではなく、五感を統率する王になるというイメージです。五感が自分で制御できていないと環境に心が振り回されっぱなしになってしまい、これも自己探求どころではなくなってしまいます。

ダーラナー(集中)

八支則の6つめはダーラナー、集中です。ここからは内的部門に入っていきます。

外的部門で五感や呼吸、身体のコントロールを通して心を鎮め、自己探求に向かう準備を重ねてきました。ダーラナーではその心をひとつのところに定めて集中し、深い境地に入っていきます。集中の対象は何でもよいのですが、よく使われるものとして呼吸、眉間、鼻先などの身体、聖音オームなどが挙げられます。ここでいう集中とは、特定の場所に長時間、高い集中を保ち続けることです。

実際に目を閉じて坐り、自分の呼吸に集中してみると、すぐに集中が途切れてしまうことに気づきます。頭の中のおしゃべりが気になったり、五感を刺激するものについ興味が移ってしまいますが、少しずつ集中する時間を伸ばすよう練習します。

ディヤーナ(瞑想)

八支則の7つめはディヤーナ、瞑想です。6つめのダーラナーの状態を続けていると、自然と訪れるより深い境地です。ここまでがダーラナー、ここからがディヤーナとはっきり区別できるものではなく、ダーラナーからひと続きで繋がっています。

サマーディ(三昧)

八支則の最後、8つめはサマーディです。三昧(ざんまい)と訳され、自我意識が消滅し、ダーラナーの対象と自己の区別がなくなり、集中しているという意識すらなくなった状態を指します。

ディヤーナ同様、サマーディにも明確な区別がなく、高い集中状態を保ち続けることで自然と訪れる深い境地です。

ヨガとは心を鎮めて自分を観察すること

他人のことならうまくアドバイスできるのに、自分のこととなるとよくわからないという経験をしたことはありませんか?これは自分で自分のことがわかっていない、ありのままに自分を見るのが難しいために起こります。

ヨガを通して自分を観察していると、私たちは「自分」というフィルターを通して主観的に世界や自分を見ていることに、だんだん気づいてきます。このフィルターは汚れたり、歪んだりしていて、物事をありのままに見ることができません。このフィルターを綺麗に掃除し、汚れや歪みを取り除いていくのがヨガの練習です。

自分のこともありのままに見ること、つまり本来の自分を探求する8つのステップが、八支則です。ですが知識として八支則を知っているだけでは、何の意味もありません。ポーズの練習をはじめ、ヤマニヤマを守り、瞑想、プラーナーヤーマ、聖典を読む、マントラを唱えるなど、複合的に練習を進めてください。

ヨガを通して、他人を見るのと同じように、客観的に自分を見る練習をぜひ始めましょう!

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