ヨガに興味はあるけど、最初の一歩が踏み出せない。
そんな方から最もよく聞くワードがこれです。
「体が硬いからヨガは無理です…」
結論から言うと、体が硬くてもヨガはできます。
もっと言うと、体が硬い人のほうがヨガに向いている部分もあるのです。
この記事の目次
体が硬い人が「ヨガはできない」と思ってしまう理由
雑誌やSNS、テレビCMから、雑技団のようなアクロバティックなヨガのポーズがたくさん目に入ってきますよね。「ヨガってこういうポーズをするものなんだ」という先入観をお持ちではないですか?
ヨガのポーズの数は何千とも何万とも言われており、もう現代では正確に数えることは不可能なほどです。
メディアで見るのはたくさんのポーズの中のごくごく一部なのですが、アクロバティックで高い柔軟性が必要ないわゆる“映える”ポーズが多く目に入るように感じます。
しかし、ヨガにはシンプルなポーズもたくさんあるのです。
まずはご自身の持っているヨガのアクロバティックなイメージを手放していきましょう。
体が硬い人がヨガに向いている理由4つ!
現役インストラクターが実際に見て体験してきた、体が硬いからこそ感じられるヨガのメリットを4つ挙げてみました。
ひとつずつ見ていきましょう。
体の変化を感じやすい
ヨガを練習するときにとても大切なのが“感じる”ことです。
最初はインストラクターのポーズを見様見真似でやってみますが、同じ形になることを目標にしてしまってはもったいない!
形を真似るのがゴールではなく、その形になった時に自分は何を感じるかに気づくことがとても重要なのです。
体が硬い場合、“痛み”というサインが体にわかりやすくフィードバックを与えてくれるので、どう感じているか自覚しやすくなります。
「前屈のポーズでは裏腿がつっぱる」
「三角のポーズでは腰にハリを感じる」
こんなふうに自分の体をしっかりと感じることができます。
さらにヨガを続けることで、
「裏腿のつっぱりがなくなってきた」
「腰のハリが前よりも小さくなった」
というふうに、体の変化も感じやすいのです。
体が柔軟な場合、伸びているという感覚が小さいのでポーズから受け取れる感覚は硬い人より少なくなり、感じることが少し難しくなります。
モチベーションを高く保てる
体が硬い場合、肩こりや膝の痛み、腰痛などの小さな不調を持っていることが多いです。こういう人ほど、ヨガをすると体の調子が良くなり、日常生活が楽になっていきます。
「最近、肩こりが軽減された気がする」
「たくさん歩いても疲れなくなった」
「前屈で手が床につくようになった」
などの変化を感じやすいのです。
変化に気がつくと、これを続ければもっと変わるんだ!というモチベーションに繋がり、ヨガを続ける原動力になります。
人と比べるものでない、というのが腑に落ちる
ヨガを練習するときに大切なのが、人と比べないということです。インストラクターが言っているのを聞いたことがある人も多いのではないかと思います。
特に最初は人と比べがち。
グループレッスンに参加して、
「みんなあんなに深く前屈しているのに、自分は…」
「自分がいちばん足が上がっていなくて恥ずかしい」
などと思ったことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。
ヨガは順位をつけたり勝敗を決めたりするものではありません。
しかし私たちは小さな頃から、勉強や足の速さ、仕事などで順位をつけられるのが普通の環境で生活しているので、この人と比べないという考え方を受け入るまでに少し時間がかかるように思います(私の場合はそうでした)。
頭では比べなくていいとわかっているけど、ふと気づいたらまた人と比べている…そんなことの繰り返し。
でも体が硬い場合、自分を感じながら練習をし変化に気づくようになると、人と比べることに意味はないことが自然と理解できるようになってきます。
そして人と比べるのではなく、昨日の自分、1年前の自分と比べてどう変化しているかを楽しむことができるようになっていくのです。
ここで注意したいのは、変化はいつも良い方向とは限らないということ。
時には後退しているように感じたり、調子が悪かったりするのも普通のことであり、それらもすんなり受け入れられるようになります。
最初は人と比べることで外側に向いていた意識が、次第に自分の内側に向かっていくことで、どんどん練習の質が上がっていくのです。
リラックスすることの重要性を理解しやすい
体が硬い場合、無意識に体をこわばらせていて、自分では力の抜き方がわからなくなっていることが多いです。
体を鍛えたり動かしたりすることを教えてもらう機会はたくさんありますが、リラックスの仕方を教えてもらう機会はあまりないため、どうしたら力が抜けるのかわからない人がとても多く、常に体は緊張状態。
ヨガの練習の最後に“シャバーサナ”という仰向けで寝る(ように見える)ポーズを必ず練習するのですが、リラックスできるはずの仰向けでも体の力が抜けないのです。つまり、毎晩寝ているときも力が抜けていないということ。
ヨガは緊張と弛緩を繰り返すことで、活性化させることとリラックスさせることの両方を学んでいきます。
何度も練習を繰り返していくと、徐々に体の力が抜けるという感覚がわかってきて、最後のシャバーサナが快適になっていきます。
すると呼吸が深まり自律神経が整うため、睡眠の質も上がり、さらに体の変化を感じることができるでしょう。
柔軟性を養うために気をつけると良いポイント4つ!
ヨガの練習を続けていれば体に必ず変化は訪れるのですが、体の硬い人が変化をより楽しんでいくために、柔軟性を養う上で気をつけると良いポイントを4つお伝えしていきます。
呼吸を深くゆったりと保つ
日常の無意識的な呼吸は吸うときも吐くときも浅めなのですが、ヨガをしているときは“努力呼吸”という意図的な呼吸をします。
努力呼吸では吸うときに力みやすく吐くときに緩みやすいという特徴があるのですが、体が硬い人はストレッチすることに意識を向けすぎて、吐いているときも目一杯伸びようとつい力みっぱなしになりがちです。
息を吐くときは呼吸が震えたり引っかかったりする感じがなく、なめらかに吐くことができているかに意識を向けてみてください。
最大限に体を伸ばすのことよりも、なめらかに息を吐くこと、吸うよりも吐く息を長くすることを優先にします。
この程よいリラックス感が、柔軟性を養っていく上でとても大切なポイントなのです。
痛いほど効いているという思い込みを手放す
体が硬い人は、「早く柔軟性をあげたい!」という気持ちから強めにストレッチをしてしまったり、「体が硬いので何をしても痛いのは当たり前」という前提で練習をしていることが多いです。
マッサージなどもそうですが“痛いほど効いている”わけではないということをぜひ覚えておいてください。
痛すぎる刺激は、これ以上伸ばすと危険だから伸びではダメ!という信号が体から発せられ、逆に体を縮こまらせてしまうのです。
優しい刺激のストレッチだと「こんなので効いているのかな?」という心配な気持ちが出てくるかもしれませんが、気持ちいいと思える範囲の中で動きましょう。
背骨をまっすぐに保つ
体が硬い人は、腕や脚を動かすときに背骨をまっすぐに保つのが難しいことが多いです。
腕の動きは肩関節が、脚の動きは股関節が担っていますが、体が硬いと肩や股関節の柔軟性だけでは可動域が狭くなってしまうため、背骨が代わりに動いて何とか動きを作り出そうとします。このような動きを“代償動作”と言います。
日常生活においては大きな支障がないかもしれませんが、このやり方は柔軟性が上がらないだけでなく、怪我にもつながりやすいのです。
気をつけるポイントを動画で確認しながら代償動作を小さくして、肩関節、股関節をしっかり動かして可動域を広げていきましょう!
動的ストレッチを取り入れる
ストレッチには大きく分けてふたつのやり方があります。
“静的ストレッチ”と“動的ストレッチ”です。
静的ストレッチとは筋肉を伸ばした状態を一定時間保持するやり方のことをいい、動的ストレッチとはリズミカルに動きながら少しずつ筋肉を伸ばしていくやり方のことをいいます。
体が硬い人にまず取り入れてほしいのが動的ストレッチです。動画のように、同じ動きを反復しながらポーズを行なってみてください。
繰り返しているうちにかたまった筋肉がほぐれて、体が動きやすくなるのが感じられると思います。
また、関節の中には“関節包”という、関節の動きをスムーズにするための潤滑液をたくわえている場所があります。
関節を繰り返し曲げたり伸ばしたりすることでこの関節包が刺激され、潤滑液が出るので動きがなめらかになるのです。
このように動的ストレッチは筋肉をほぐしたり、関節包を刺激して潤滑液を出すことにもつながるので、体が硬い人にオススメなのです。
体が硬いと思っている人ほど、ヨガをしよう!
ヨガはいつでもどこでもできるもので、その恩恵はだれでも受け取ることができます。
体が硬い人にしかできない経験、受け取れない感覚もありますし、柔軟性の高い人にしかできない経験、受け取れない感覚もあります。
しかし、柔軟性の高い人は身体を硬くしようと思ってもできませんが、体が硬い人は練習を続ければ確実に柔らかくなっていきます。
つまり体が硬い人は、柔軟な人よりもポーズを通して得られる感覚が圧倒的に多いということ。
体はひとりにひとつしか与えられていません。
自分のたったひとつの大切な体をありのまま受け入れ、人と比べずにヨガの練習を楽しく始めてみましょう!